2011年09月07日

退院のご報告。

先日の9月3日(土)に、無事退院することができました。心配してくださったみなさま、ありがとうございました。

6月27日(月)に入院してから、2ヶ月と少しでの退院となりました。

入院前に主治医の先生からは入院期間は3ヶ月ほどと言われていたのですが、7月4日に受けた手術の術後の経過が非常によかったことと、術後の各治療の副作用がほとんどなく、予定されていた治療が全て遅れなく進んだことで、当初の見込みよりも早い退院となりました。

退院はしましたが、しばらくは自宅療養とさせていただき、来月あたりから少しずつ仕事に復帰していければと思っています。身体の方はもう元気なのですが、若干後遺症もありますので、焦らず少しずつ、と思っています。

会社の方は、入院前のブログ記事(しばらく入院することになりました。)の通り、スタッフのみんなががんばってくれているようですので、もうしばらく甘えさせてもらおうと思います。

この自宅療養の間に、社会復帰に向けたリハビリも兼ねて、今回の病気のことや、入院中に考えたことなどを、少しずつブログに書いていきたいと思っています。

まず僕の病気ですが、簡単に言うと、悪性の脳腫瘍、専門的に言うと、神経膠腫(グリオーマ)です。悪性度はグレード3。グレード1が良性で、グレード4が超悪性です。

「悪性の脳腫瘍」というと、「高山はもうすぐ死ぬんじゃないか?」とか「過酷な闘病生活で身も心もボロボロになっているんじゃないか?」と思われるかもしれませんが、全くそんなことはありませんので、この点をまず今日はご説明します。

確かに、グレード3のグリオーマは、一般的には予後があまりよくありません。一般的な5年生存率も、25%です。つまり平たく言ってしまうと、4分の3の確率で、5年以内に死んでしまうということになります。

でも、僕が今回お世話になった東京女子医科大学病院で治療を受けた患者さんの場合、この5年生存率が78%と3倍以上になります。つまり8割方、5年以上生きられるということですね。女子医大は他の病院と比較してグリオーマの治療成績が圧倒的に優れています。国内ではダントツです。その理由は後述します。

ちなみに脳腫瘍の場合、再発が多い時期は術後2〜3年と言われており、その間に再発しなければ、それ以降もあまり再発することはないようです。だから5年生きられればその後もずっと生き続けられる可能性が高いと考えられます。

なお、手術前に先生からは、「検査画像から診断すると、グリオーマのグレードは3か4だろう」と言われていました。そして、「手術で摘出した腫瘍組織を病理検査に出して調べないと、最終的な結論は出ない」と。

グレード4の場合、グレード3と大きく異なり、予後はかなり厳しいです。一般的な5年生存率は7%、女子医大で治療しても13%です。手術から2週間ほど経ち、病理検査の結果が出て、先生からグレード4ではなく3だと聞いたときには、本当に本当にホッとしました。5年生きられる可能性が78%か13%かの違いですから。

また脳腫瘍の予後においては、腫瘍の悪性度(グレード)とともに、手術でどこまできれいに腫瘍を取れたか、つまり腫瘍の摘出率も重要になります。取り残しがあれば、数年のうちに再発してしまう可能性が高くなります。でも、他の臓器のがん(胃がん、乳がん等)と異なり、脳腫瘍の場合、腫瘍の周囲の、がん細胞が散らばっている可能性のある組織も含めて、臓器をまるごと摘出してしまう、ということができません。脳をまるごと取ってしまったら生きていけませんので。だから、生きていくのに必要な脳の機能を損なわずに、ギリギリのところまで腫瘍を取ることが重要です。

これが非常に難しく、従来は、術前に撮影したMRIやCT等の検査画像をもとに、外科医の勘と腕に頼って摘出されていました。その結果、手術中はきれいに取れたと思っていたけれど、実際には取り残しがあって、その後再発してしまった、ということがあり、5年生存率の低さを含めた予後の悪さにつながっていました。

女子医大の脳神経外科は、これをテクノロジーを使って抜本的に解決しました。手術中に腫瘍組織の有無や位置を科学的に確認できる「術中MRI」の設備を開発したのです。これにより、手術で腫瘍を摘出した上で、そのまま手術室内で取り残しがないかをMRIで確認して、取り残しがあればその位置や大きさを確認した上でさらに摘出する、ということが可能になったのです。他にも多くの機器や設備を開発し、それが摘出率、そして治療成績の飛躍的な向上につながっています。これが、女子医大が脳腫瘍治療において他の施設と比較し圧倒的に優れている理由であり、僕が女子医大にお世話になることにした理由です。

女子医大の脳腫瘍治療についてはこちらもご参照ください。

▼神経膠腫(グリオーマ:glioma)治療方針:東京女子医科大学脳神経センター脳神経外科

この最先端の設備と、執刀してくださったすばらしい先生たちのお陰で、僕の場合は、MRI検査で確認された全ての腫瘍を摘出できました。摘出率は98%と言われています。なぜ100%でないのかというと、検査では確認できない小さながん細胞が、摘出した腫瘍の周辺の正常組織に散っている可能性があるためです。前述の他の臓器のがんのように、臓器丸ごと摘出すれば摘出率100%ですが、そうではないため、散っている可能性を考慮して98%と言うのだそうです。でも実質的には全摘出と言えそうです。執刀してくださった主治医のM先生としても、僕の手術は会心の出来だったようです。

以上のように、女子医大での5年生存率が78%のグレード3だったことと、腫瘍摘出率がほぼ全摘出と言える98%だったことから、僕も今後再発せずに長期生存できる可能性が非常に高いと考えています。

また入院中は、手術の後に、放射線治療と化学療法(抗がん剤点滴)を受けました。前述のように、手術で腫瘍組織はほぼ全て摘出できたのですが、その周辺の正常組織にもがん細胞が散っている可能性があります。それをやっつけて再発を防ぐための予防的治療です。

放射線治療は、6週間にわたり月曜日から金曜日まで一日数分ずつ行いました。それが9月2日に終わったため、その翌日に退院しました。

化学療法は、入院中に2回、抗がん剤のの点滴を行いました。今後も2ヶ月に一度、通院で点滴します。これは今後も1年半ほど続きます。

お陰さまで、放射線治療も抗がん剤治療も、僕の場合はこれといった副作用もなく、一般にイメージされるような苦しさや辛さは全くありませんでした。放射線が当たった部分の髪の毛が抜けた程度です(なので外出時は帽子かバンダナを被っています)。また手術からの回復も早く、術後数日で、病棟内を歩き回ったり、シャワーを浴びて頭を洗ったりできるようになっていました。術後にお見舞いにきてくれたみなさんは、予想外に元気な僕の様子を見て一様に驚いていましたが(笑)。

ただ、手術の後遺症は残っています。僕の場合、腫瘍ができたのは脳の後頭葉の右側です。後頭葉は視覚を司っています。そこを手術したため、視覚障害が出ています。具体的には視野の左下4分の1がうまく見えず、また見ている対象物(PC画面、本のページ、手のひら等)の左側部分がうまく認識できない(専門的にいうと、半側空間無視的な症状)、というような状況です。高次脳機能障害の一種です。

これは独自のリハビリ(また別途書きます)の効果もあり、術後少しずつ回復はしてきています。手術直後は本を読んだりiPhoneをいじったりするのも大変でしたが、今では大丈夫です(まだ術前のようなペースとはいかないのですが)。ただ、一人での外出はまだ危なくてできません。退院数日前には、一人で病院内を歩いている時にコンクリートの柱に激突して額を怪我し、眼鏡を壊してしまいました。今日も先ほど家の中で壁の角にぶつかりました。危ないので、外出にはまだ付き添いが必要な状況です。

主治医の先生からは、視覚障害は徐々に回復していきますが、何ヶ月という単位で時間がかかります、と言われています。ですので、ここは焦らずじっくりと、と思っています。視覚に障害が出る可能性は、術前に先生からお聞きしていましたし、多少の障害が出ても、腫瘍をしっかり取る方を優先してくださいとお願いしていましたので、自分としては問題ありません。あとは地道に回復させていくだけです。

病気の概要と自分の現状はこのような感じです。

今回、病気が分かったときに、まだ絶対に死にたくない、と思いました。うちの娘はまだ1歳です。これからもっとかわいくなっていく娘の成長を見ずに死ぬのは絶対に嫌だと思いました。そして、自分の人生の目標を、「19年後に娘が成人した時に、娘と奧さんと一緒にお酒で乾杯する」ということに決めました。とにかくこの目標達成を最優先に生きていこうと。

お陰さまで、手術がうまくいき、病理検査の結果でグレードが4ではなく3だったことで、この目標は達成できるものと信じています。今後は通院での治療や検査を継続するのはもちろん、生活の仕方や仕事の仕方を見直し、がんを再発させない生き方を心がけていきたいと思っています。

入院以来、心配してくださったみなさん、本当にありがとうございました。みなさんの応援は本当に力になりました。お陰さまで無事に退院できました。今回こうして、退院のご報告と合わせ、病気の予後についてもポジティブなご報告ができ、うれしく思っています。

今回の病気に際して、自分は多くの人に助けてもらいました。家族、友人、女子医大の先生方と看護師さんたち、会社のスタッフ、等々。こうしたみなさんの助けがなければ、僕はあと数年の命でした。人は一人で生きているのではないということを本当に実感しました。ありがとうございました。

これからこのブログで、今回の病気で経験したことや考えたことなどを少しずつ書いていこうと思います。自宅療養期間のリハビリにはちょうどいいかと思っています。また、同じ病気の方や、同じ脳機能障害で悩む方にも、少しでもお役に立てればと思っています。

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投稿者 いろは : 2012年3月13日 11:37

現在11歳の息子が、グリオーマと闘っております。 
高山さんと同じ、グレード3です。
手術で100%近く摘出していただき、今放射線治療と抗腫瘍薬を服用しています。
息子は、左前頭葉でしたので、右手に麻痺が残りました。
息子も放射線治療がおわれば、すぐ退院出来るといいなと、期待が持てました。あと、16回です。
これからのお元気なブログも楽しみにしております。

投稿者 オーシャンブリッジ高山 : 2012年3月14日 15:17

いろはさん、コメントありがとうございます。

息子さんが治療中なんですね。グリオーマの場合、グレードも重要ですが摘出率も非常に重要ですよね。グレード3で100%近くの摘出率でしたら僕と近い状況です。ぜひ一緒に克服してしまいましょう!

放射線治療と化学療法で大きな副作用等が出なければ、恐らく放射線治療終了後すぐに退院できるのではないかと思います。私は放射線照射最終日の翌日土曜日に退院しましたが(家内がお迎えにくる都合もあり)、照射最終日当日でも退院できたようです。また同じ病室の他の患者さんは、月曜日の照射最終日を前に金曜日に退院され、月曜日は外来で放射線照射に行ったようですよ。

息子さんの回復をお祈りしております!

高山の著書

「治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ」書影・表紙画像\
治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ
(幻冬舎 税込1,188円)

脳腫瘍、悪性リンパ腫(白血病)を乗り越えた闘病記。
病院選び、治療法選択、医師との信頼関係の構築、セカンドオピニオンなどの考え方も。

プロフィール

高山知朗(のりあき):1971年長野県伊那市生まれ。伊那北高校、早稲田大学 政治経済学部卒業。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)戦略グループ、Web関連ベンチャーを経て(株)オーシャンブリッジ設立、代表取締役社長就任。現在、同社ファウンダー。横浜市在住。

2011年7月に脳腫瘍(グリオーマ)の摘出手術。後遺症で視野の左下1/4を失う。2013年5月から悪性リンパ腫(B細胞性リンパ芽球性リンパ種/急性リンパ性白血病)の抗がん剤治療。合併症で帯状疱疹後神経痛も発症し、現在も激しい痛みと闘う。2016年10月に脳腫瘍、悪性リンパ腫の2つのがんから卒業。同年、幻冬舎より「治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ」を出版。

2017年2月、3度目のがんである急性骨髄性白血病を発症、同年4月にさい帯血移植治療を受ける。現在は妻、娘とともに元気に暮らしている。

連絡先

メール: nori.tkym[at]gmail.com
([at]は@に読み替えてください)

※病気や病院に関する個別のご相談については、まず「治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ」をお読みの上、ご連絡いただけますようお願いします。いただくご質問に対する回答の多くが、すでにこの本に書かれております。ご理解お願いします。

※いただいたご連絡の全てにご返事できるとは限りませんのでご理解ください。

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