2011年12月28日

病理検査の結果/脳腫瘍と付き合う心構え/MRI画像で見る穴の空いた脳(経緯18)

前回書いた経緯の記事(18日ぶりの我が家は病室と何が違う?(経緯17))から、しばらく時間が空いてしまいました。

初めての外泊から病院に戻った2日後、7月20日(水)に、主治医のTM先生から手術と病理検査の結果についての説明がありました。

特に、手術で摘出した腫瘍組織の病理検査の結果が重要でした。これで僕の脳腫瘍(神経膠腫/グリオーマ)のグレード、つまり悪性度の正式な診断が下ります。術前の画像診断ではグレードは3か4と言われていました。そして手術直後のICUでの説明でも、手術中の簡易的な病理検査ではグレード3だった、グレード4の腫瘍は見つからなかった、とのことでした。でもどちらのタイミングでも、正式な診断は病理検査の結果が出てから、と念を押されていました。

このブログでも何度か書いていますが、腫瘍のグレードが3か4かで、予後、つまりあとどれだけ生きられるかが大きく変わります。神経膠腫(グリオーマ)の治療成績が他の病院と比較して格段に優れている東京女子医大病院でも、グレード3の5年生存率は78%に達するのに対し、グレード4は13%に留まります(全国平均ではグレード3の5年生存率が25%、グレード4が7%)。

病理検査では腫瘍細胞の特徴を徹底的に分析して腫瘍のグレードを確定するために、結果が出るまでに2週間ほどかかります。僕の場合は、7月4日の手術から16日後の7月20日に、主治医のTM先生からその病理検査の結果と手術の結果の説明を受けました。

結果は、グレード3でした。
そして腫瘍の摘出率は98%でした。

以下、説明を聞いた当日の夜にiPhoneからEvernoteに入力したメモと、先生が説明しながら書いてくれた説明用紙をもとに、先生のお話を再現します。

病理検査の結果、グレードは3。

腫瘍の種類は、星細胞腫と乏突起膠腫の混合性神経膠腫(乏突起星細胞腫、oligoastrocytoma)。染色体異常のデータからは星細胞系の特徴あり。
(ここで病理検査の詳細についての説明あり。染色体異常のパターンや増殖能等)

5年生存率等の予後には、病理検査結果だけでなく腫瘍摘出率も非常に重要。その摘出率は、98%。

脳腫瘍の手術では、100%摘出とは言わない。摘出した部分の周囲にがん細胞が散っている可能性があるため。でも、今回はMRIで見える範囲の腫瘍は全て取れた。

他の病院ではなかなか98%も摘出できる例が少なく、十分なデータがないので、今回のようにグレード3で摘出率98%の場合に生存率がどうなるかは、なかなか判断できない。

しかし、今回は取るべき腫瘍はしっかり取れている(TM先生、自信を持っての発言)。

最も心配していた腫瘍の悪性度が、グレードが4ではなく3だと聞いて、本当に安心しました。そして、見える範囲の腫瘍が全て摘出できて、摘出率は98%でした。

TM先生は非常に丁寧に、分かりやすく、そして自信を持って説明してくださいました。特に、今回の手術で腫瘍が98%摘出できたことには、ご自身も非常に自信を持っておられるようでした。説明内容はもとより、先生のその自信に満ちた様子を見て、説明を聞いていた僕とうちの奥さんも非常に安心できました。

続いて、その後の化学療法(抗がん剤治療)と放射線治療について説明していただきました。

今後は、その摘出した腫瘍のコロニーの外に散らばっているかもしれない細胞を予防的にやっつけるために、放射線治療と化学療法をやりましょう。

化学療法(抗がん剤)では、新薬として注目されたテモゾロミド(テモダール)は、再発ではなく初発の脳腫瘍に対しては効果のエビデンスが不十分であるなどの理由から、今回は使用しない。今回はACNU(ニドラン)を使用する。副作用としては骨髄抑制があるが、自覚症状はほぼない。血液検査で数値の低下が分かる程度。

放射線は60グレイを照射。平日(月〜金)毎日一回ずつ、計30回(6週間)照射する。

放射線治療の期間の最初と最後の少し前に、抗がん剤を点滴する。その後、放射線治療が終了して8〜9週後から、外来で点滴を継続。外来での点滴は二ヶ月に一度で、6〜8クール(12〜16ヶ月)続ける。点滴の一ヶ月後にも経過を見るために外来診察に来る。

また、今後の心構えについても説明してくれました。

このグリオーマという病気とは長く付き合っていかなければならない。でも、患者さん自身が、再発のことばかり恐れていてはよくない。患者さんには、5年後、10年後の希望を持って生活していってもらいたい。再発等のリスクは、自分たち主治医がきっちりケアしていきますから。

例えばグレード2で手術で摘出できたとしても、5%ほどは再発してしまう。でも、ご本人にとっては、再発してしまえば5%もなにも関係ない。医師はそういう再発の可能性を常に考えながら、再発させないようにきちんと治療していく。

もし仮に再発しても、それで終わりではない。「今度の手術では視野が半分になりますが、がんばって摘出しましょう」「今度は左半身不随になるかも知れませんが、摘出してがんをやっつけましょう」と患者さんと一緒に最後まで戦っていくつもり。

患者さんは将来の希望を持って生活していく。医者は常に再発のリスクを考え治療の手を打っていく。患者と医者のそのバランスがいいのではないか。

一年後、三年後を見据えた治療の積み重ねの先に未来がある。高山さんはまだ40歳。40年後まで考えていかないといけないですからね。

この時の先生のお話は心からうれしかったです。「自分は40年後の人生のことを考えてもいいんだ」と、先生から認めていただいたように感じたからです。病気が見つかったときに決めた「19年後に娘が成人した時に、娘と奧さんと一緒にお酒で乾杯する」という人生の目標に、先生からお墨付きをもらえたように感じて、本当にうれしかったです。

また、術後、視野の左下4分の1が見えなくなった視覚障害(現在はすでにかなり回復しています)については、このように説明してくださいました。

手術中は、目に光を当てて視神経の信号のモニタリングをしながら、視神経を傷つけないように腫瘍を摘出した。しかしモニタリングは厳密ではない。現在、視覚障害が出ているのは、視神経と後頭葉の視覚野をつなぐラインが、完全に切れているわけではないが本数が減っているためかも知れない。

視野については、同じように手術で視野の一部が見えなくなりながら、今では自転車で通勤できるまでに回復している元患者さんもいる。だから高山さんもいずれ、手術前と同じ生活ができるようになるでしょう。

自分たちは「視野欠損」という表現は使わない。視野が欠損しているのではなく、実際は見えているけれども、意識が向いていないだけかも知れない。眼から入った情報のうち、脳に何が映っていて、どう認識されているのかは、実はまだ分かっていない。自分たちも研究しているところ。

視覚障害のリハビリも、まだ世界的にもきちんと研究している人は少ないのでは。高山さんがやっているゲームやビデオ、レーザーポインターと模造紙などを使った取り組みは、効果的ではないかと思う。

このときの先生との会話がきっかけで、視覚障害等の高次脳機能障害について先生と共同研究している産業技術総合研究所のK先生を紹介していただきました。その後K先生とは、現在に至るまで、僕が独自で取り組んでいる視覚障害のリハビリについて、経過をご報告したりフィードバックをいただいたりしています。

この日、TM先生の説明をひと通りお聞きした後、あまりにも安心したため、先生にお願いしてMRIの検査画像の写真を撮らせていただきました。
脳腫瘍摘出手術前後のMRI画像
写真をクリックして拡大した後、マウスを写真の上に持ってくると、腫瘍の位置が表示されます。左半分の16枚が、手術の直前(7月1日)に撮影した画像です。右半分の16枚が、手術の15日後(7月19日)に撮影した画像です。

左半分の術前の写真では、腫瘍の位置は分かりにくいですが、右半分の術後の写真では、腫瘍を摘出した跡が白くなっているのがお分かりいただけるかと思います。

最大に拡大した写真はこちらからご覧いただけます。

今になって改めて写真を見ても、「自分は脳の一部を手術で切り取られたんだな、そこにはぽっかりと丸い穴が空いているんだな」と不思議な気持ちになります。そして、それでもほとんど普通に生活できていることを考えて、また不思議な気持ちになります。

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投稿者 こうちゃん361 : 2011年12月28日 14:40

がんにもいろいろあるのですね。私の悪性リンパ腫にはグレードという考え方はありません。胃がんや肺がんと同じようにステージという進行状況がI(1)からVI(4)まであります。私は血液やリンパ液だけにとどまらず、肝臓がひどり炎症を起こしていましたから、自動的にステージVIという最も重い症状でした。生存確率は統計処理によって大きく変わりますのであまりあてにはなりませんが、本によっては5年生存率が25%程度と書いてあるものもありました。

でも私は幸いなことに転移も再発もなくそろそろ最初の治療からの経過が5年に近づこうとしています。白血病や悪性リンパ腫は抗がん剤が最も効きやすいがんとされています。ですから最初に試した抗がん剤と私の身体や症状がうまく適合していたという幸運があったのだと思います。病期から復帰してから、免疫力を高めるために始めた自転車で本四架橋やら琵琶湖やらさらには乗鞍岳までも走りました。ツール・ド・フランスで7連覇したランス・アームストロングにはかなわないにしても、こんな風に社会に戻れる人も多いのが、今のがんの実情です。かつての「不治の病」というイメージは早く亡くなって欲しいものです。

ただそれも医学の発達があればこそのことです。10〜15年前と今では大きく異なります。高山さんのようにその時考えられる最も良い治療法を探すことが大事なことは言うまでもありません。その意味では、5年前の私は何も知らずにおろおろしただけでした。

今年はいろいろなことがあったでしょうが、きっと来年もあることでしょうね。良いことも悪いことも全て飲みこんで、その中で自分が生きてきた証を残していくことが大切なのかなぁと思います。高山さんのブログは前から拝見していましたが、同じ病気だということで多くのことを考えさせられたことは私にとっては今年の私的な出来事としては大きなことでした。

投稿者 オーシャンブリッジ高山 : 2011年12月28日 15:04

こうちゃん361さん、いつもコメントありがとうございます!

脳腫瘍の場合、他の臓器に転移することがないんですよね。転移するにしても脳内の別の部位です。
ですから他のがんのように転移の度合いによって進行度合い(ステージ)が進むという考え方がありません。純粋に病理検査に基づいてがん細胞の悪さ度合い(治療に対するしぶとさや増殖能力など)でグレードが分かれています。

でも悪性リンパ腫のステージ4から、一つの区切りである5年を無事に迎えられようとしていて、しかも自転車で日本中を駆け巡るほどお元気で、本当に素晴らしいと思います。

がんはすでに治る病気なんですよね、全てではありませんが。僕も「脳腫瘍」というと「もうすぐ死ぬんじゃないか」と思われるのが不本意なので、このブログでその実際を詳しく書いているという面もあります。

また、より多くのグリオーマ患者さんに、グリオーマは病院によって治療成績が異なりますよということを知っていただきたいということも、ブログに病気のことを書いている大きな理由です。僕の命を助けてくれた友人や先生方へのせめてもの恩返しだと思っています。

いつもお読みいただき、コメントを下さり、本当にありがとうございます!
来年もいい年にしましょう!

投稿者 同病者 : 2012年1月14日 03:26

はじめまして、少し気になったので老婆心ながらコメントいたします。
まずはじめに、私は高山様と同じ神経膠腫Gr3を煩い、目下闘病中の身です。とはいっても、私は4年前に発症し、摘出、リニアックを経て、テモダールを服用して予後観察しておりました(女子医大ではニドランなんですね)。なので、病歴は私の方が少し先輩のようです。
私のコメント2点です。
1.手術前後のMRI画像をUPされていましたが、一口にMRIと言ってもいろいろな撮像方法があるようで、左と右は、違う種類かまたは白黒反転の画像を比較されているように思えます。その理由は、脳中心部の髄液の色が左はクロ、右はシロです。さらに、同一手法のMRIにしては、頭骸骨の見え方が違いすぎると思われませんか?私も医者ではなく、自分の画像を見たり、その時の説明での耳学問なので断言はできません。もし機会があれば、ご自分の状態を正確に把握するためにも、先生に確認してみてはいかがですか?(女子医大はグリオーマ研究の最先端なので先生の診断は間違いないはずですが、高山様のご認識と先生の説明に齟齬があってはいけないと思い、おせっかいかとは思いましたがコメントしたしだいです)
2.実は、私はその後、MRIで再発疑いとなり、女子医大のメチオニンPETを受け、更にその疑いが強まりました。そこで、主治医の先生と色々検討して、大阪医科大学のBNCT法と言う中性子線を照射する方法をトライすることになりました。高山様は、98%摘出とのことなので、再発しないことを祈りますが、上記のような方法も開発されつつありますので、ご参考までです(大阪医大、BNCTで検索可能)。

長文失礼致しましたが、お互い病気に打ち勝てるようがんばりましょう。

投稿者 オーシャンブリッジ高山 : 2012年1月14日 12:59

コメントありがとうございます。
同じ病気、同じグレードなんですね。

抗がん剤は、必ずしも女子医大だとニドランというわけではなく、テモダールを使うケースもあるようです。病理の結果などによるようですね。同じ病室の患者さんでもテモダールを服用されている方がいました。

MRIについては、もちろんこのブログの写真の左半分、右半分がそれぞれ異なる方法で撮影されているのは私も理解しています。この写真の場合は造影剤の有無だと思います。あくまでこれはこの日の説明用に現像された画像で、その際に摘出前と後でそれぞれの状況が分かりやすい(腫瘍の位置が見えやすい、あるいは摘出後の状況が分かりやすい)撮影方法の画像を先生が選択されて現像されたのだと思います。先生方は画像診断においてはPCの画面でより大きな画像をより大量に確認されていますからね。特に女子医大では脳神経外科の先生も放射線腫瘍科の先生も両方とも画像を見て診断され、それぞれに説明してくださいますので、その点では非常に安心しています。

BNCT法というのは知りませんでした。早速ネットで調べてみました。情報ありがとうございます。本当にこの分野は日進月歩で新しい治療方法が生まれていますし、より長く生きれば、それだけ治療の可能性が広がっていきますよね。

お互い一日一日を着実に積み上げて、病気に負けず、長期生存を目指していきましょう!今後ともよろしくお願いします!

高山の著書

「治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ」書影・表紙画像\
治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ
(幻冬舎 税込1,188円)

脳腫瘍、悪性リンパ腫(白血病)を乗り越えた闘病記。
病院選び、治療法選択、医師との信頼関係の構築、セカンドオピニオンなどの考え方も。

プロフィール

高山知朗(のりあき):1971年長野県伊那市生まれ。伊那北高校、早稲田大学 政治経済学部卒業。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)戦略グループ、Web関連ベンチャーを経て(株)オーシャンブリッジ設立、代表取締役社長就任。現在、同社ファウンダー。横浜市在住。

2011年7月に脳腫瘍(グリオーマ)の摘出手術。後遺症で視野の左下1/4を失う。2013年5月から悪性リンパ腫(B細胞性リンパ芽球性リンパ種/急性リンパ性白血病)の抗がん剤治療。合併症で帯状疱疹後神経痛も発症し、現在も激しい痛みと闘う。2016年10月に脳腫瘍、悪性リンパ腫の2つのがんから卒業。同年、幻冬舎より「治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ」を出版。

2017年2月、3度目のがんである急性骨髄性白血病を発症、同年4月にさい帯血移植治療を受ける。現在は妻、娘とともに元気に暮らしている。

連絡先

メール: nori.tkym[at]gmail.com
([at]は@に読み替えてください)

※病気や病院に関する個別のご相談については、まず「治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ」をお読みの上、ご連絡いただけますようお願いします。いただくご質問に対する回答の多くが、すでにこの本に書かれております。ご理解お願いします。

※いただいたご連絡の全てにご返事できるとは限りませんのでご理解ください。

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