2014年12月08日

日常に潜む他者への何気ない甘え/視覚障害に思う

今日はNTT東日本関東病院ペインクリニック科で帯状疱疹後神経痛の定期診察だったのですが、その帰り道にちょっとした出来事がありました。

僕は脳腫瘍摘出手術の後遺症で視覚障害が残り、視野の左下4分の1が見えません。日常生活で一番困るのは、人の多いところを歩く時です。

具体的に言うと、人混みを歩いているときに、自分の左側にいる人や、左後ろのあたり、左足の足元などがみえません。

そうすると、特に、自分の背後から左脇をすり抜けて追い越して進行方向正面に人が現れたり、左背後から現れて僕の正面を左から右に横切られると、全く気づかずに、その人にぶつかったり、足を踏んでしまったりします。

また小さい子が左の足元に現れると、その子にもぶつかってしまいます。家族三人でお散歩をしていて、家内と娘が手をつないで歩いているのについていく時にも、左前を歩いている娘が突然立ち止まると、ぶつかってしまいます。

だから、人混みを歩く時は、特に自分の左側や左後ろに人がいないかを確認するために、常に左側を振り返りながら歩いています。でも左側に注意が集中すると、今度は正面や右側がおろそかになるので、意識的に正面や右側にも注意を向けます。そうしないと、左側に人が来たからと右側によけたときに、そこに柱があったり人がいたりしてぶつかったりしてしまうからです。

そのため、キョロキョロしながら、自分の周囲の人や障害物の位置を把握し、それらの動きを予測しながら、ぶつからないように歩いています。非常に神経を使います。

それは、レベルは全く違いますが、サッカー元スペイン代表でバルセロナ所属のシャビみたいなものです。シャビは試合中、常にキョロキョロと周囲を見回して、味方や敵の選手の位置を把握し、次の動きを予測し、試合を決めるような適切なパスを通します。だから抜群のパス成功率を誇ります。そんなシャビの空間把握能力は、以前NHKで特集されて、科学的に分析されていました。

さて今日、NTT関東病院での診察が終わり、五反田駅に向かって歩いているときに、前述の事態が起こりました。

歩道を歩いている時に、比較的高齢の女性が背後から僕の左脇を通って追い越し、僕の正面に現れました。僕の前を左から右に横切って右側のビルに入ろうとしたようです。見えなかった僕は気付かずぶつかってしまいました。

僕が「すみません!」と言うと、その女性は驚いた様子で「どうしたんですか!?」と言いました。僕は一瞬、「それはこっちのセリフだよ」と思いつつ、左手を上げて「見えないんですよ!」と返しました。その女性は分かったような分からないような顔をして、右側にあるビルに入って行きました。

その女性からすれば、無理に僕の前を横切っても、僕が歩くスピードを緩めるか避けるかしてくれるだろうと期待していたのだと思います。残念ながら、僕はその女性が見えなかったため、その期待に応えることはできず、それまでのペースのまま直進を続け、ぶつかってしまいましたが。

でも、「自分の動きに合わせて人が動いてくれるだろう」と期待することは、一種の「甘え」なんじゃないかなあ、と思います。僕が言うべきことではないかもしれませんが。

そしてこうした「他者への何気ない甘え」というのは、自分も持っているように思います。「きっとこうしてくれるだろう」という他者への勝手な期待です。

それが期待通りにいった場合は、それを当たり前と思わず相手に感謝の意を表するべきでしょうし、期待通りにいかなかった場合は、勝手に期待した自分を戒めるべきなのだと思います。

しばらくそうしたことを意識して生活してみようと思います。

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【投稿者】nori 【コメント】コメント (4)

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投稿者 藤巻隆 : 2014年12月 9日 21:51

高山様

こんばんは。

高山様が人混みの中を歩く時に、左側が見にくく、
年配の方とぶつかったということですね。

私は近視と乱視で、小学校3年生からメガネが
手放せなくなりました。メガネを掛け始めてから
半世紀になります。

メガネをかけていますので、とりあえず見ることは
できますが、歩道を歩いていて「ひやりとした」
経験を何度もしています。

自転車に乗る人が、歩道を相当なスピードで正面
からも後方からも走り抜けていくからです。

一度後方からぶつけられ、前方に転倒したことも
ありました。幸い、怪我に至ることはありません
でした。

ですが、恐怖心を抱きました。

「ハインリッヒの法則」が当てはまると怖いです。
1つの大事故が起こる背後には、29のかすり傷程度
の事故があり、その背後には300のひやりとした
経験があるという、経験則ですね。

自転車専用道路が少ないことは分かりますが、
自転車は「車輌」であるを認識していない人が多く、
歩道を走ることを当然と考えています。

自転車は「車輌」ですから車道を走るのが原則です。
やむを得ない場合だけ、歩道を走行することが認め
られているのですが、このルールはほとんど無視
されています。

ウォーキングが私の趣味の一つですので、長距離を
よく歩きます。

その際には、(シャビのように)常に前後をキョロ
キョロ見ながら歩くようにしています。

猛スピードで走り抜けていく自転車は恐ろしいです。
現実に自転車による事故で命を落とす人がいます。
転倒し打ち所が悪ければ怪我どころか、命を落とす
こともあり得ます。

自転車に乗る人で、損害保険に加入している人は
ほとんどいないでしょう。万が一のことを考え、
損害保険に加入すべきですが、今後も加入率が増加
するとは思えません。「事故」が起こることを想定
していないからです。

「最善を望みながら、最悪を覚悟する」(投資家の
ピーター・タスカ氏の言葉)

このことは、あらゆることにおいて、重要なことだ
と考えています。

自転車に関して厄介な点は、車道のどこを走行する
べきなのか特定することが、困難なことです。

現在は車を運転することはなくなりましたが、車を
走行中、自転車やバイクがそばに来ると嫌でした。
接触したくないので、意識が自転車やバイクに集中
してしまうからです。視野が狭くなり、車の前後へ
の意識が乏しくなるからです。


歩行中は、歩行者だけでなく、自転車などにも気を
付けてください。

今後もブログを拝見し、時折コメントを書くことが
あると思います。

これからもよろしくお願いします。

投稿者 隣人 : 2014年12月10日 04:40

「背後から左脇をすり抜けて追い越して進行方向正面に人が現れたり、左背後から現れて僕の正面を左から右に横切られると、全く気づかない」

ここまで分析できているのなら、そのように移動する障害物が現れても衝突しないような歩き方をするべきでは?

『「自分の動きに合わせて人が動いてくれるだろう」と期待することは、一種の「甘え」なんじゃないかなあ、と思います。』

というのは、思い切りブーメランなのでは、と思えてしまいます。


投稿者 オーシャンブリッジ高山 : 2014年12月10日 12:07

隣人さん、コメントありがとうございます。

「そのように移動する障害物が現れても衝突しないような歩き方をするべきでは?」と書いていただきましたが、「衝突しないように、周囲を見回して非常に神経を使って、気をつけて歩いていても、それでも、ぶつかってしまうことがある」、と書いているつもりなんですよね。「衝突しないような歩き方」が簡単にできれば、あえてこんな記事は書かないですよね。普通に視野全体が見えている方にはなかなか理解しにくいことかとは思いますが、だからこそ、視覚障害を持つ者の視点で書いてみたわけです。

なお、自分自身は、「自分の動きに合わせて人が動いてくれるだろう」という期待は一切持っていません。「人が自分を避けて歩いてくれること」は一切期待していません。そもそも杖を持って歩いているわけでもありませんから、人からは自分の視覚障害のことは分かりませんしね。

しかし、記事に書いた女性のように「他人の進行方向正面に突然割り込んでも、その人が歩くスピードを落とすか、自分を避けるかしてくれるだろう」というひとりよがりな期待を持っている方は、世の中に少なくないように思います。同じように「スマホを見ながら歩いていても人は自分を避けてくれるだろう」という期待を持った方も増えているように思います。それを他者に対する一種の「甘え」ではないか、と思うのです。

でも、「ああ、この記事を読んで、隣人さんのように捉える方もいるんだなあ」と勉強になったコメントでした。ありがとうございます。

投稿者 オーシャンブリッジ高山 : 2014年12月10日 12:21

藤巻さん、コメントありがとうございます。
自転車、危ないですよね。。。

自宅の近所も自転車の通行が多く、自分一人の時もそうですが、娘と一緒に歩いている時には特に、ヒヤリとすることが少なくありません(だから基本的に僕が娘と二人で歩くことはなく、家内も含めて三人で歩いています)。自転車も免許制にするとか罰則を強化するとかしないと危ないなあ。と思っています。

高山の著書

「治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ」書影・表紙画像\
治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ
(幻冬舎 税込1,188円)

脳腫瘍、悪性リンパ腫(白血病)を乗り越えた闘病記。
病院選び、治療法選択、医師との信頼関係の構築、セカンドオピニオンなどの考え方も。

プロフィール

高山知朗(のりあき):

1971年長野県伊那市生まれ。伊那北高校、早稲田大学 政治経済学部卒業。

アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)戦略グループ、Web関連ベンチャーを経て(株)オーシャンブリッジ設立、代表取締役社長就任。現在、同社ファウンダー。横浜市在住。

2011年7月に脳腫瘍(グリオーマ)の摘出手術。後遺症で視野の左下1/4を失う

2013年5月から悪性リンパ腫(B細胞性リンパ芽球性リンパ種/急性リンパ性白血病)の抗がん剤治療。合併症で帯状疱疹後神経痛も発症し、現在も激しい痛みと闘う。

2016年年9月、幻冬舎より「治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ」を出版。

2017年2月、3度目のがんである急性骨髄性白血病を発症、同年4月にさい帯血移植治療を受ける。

2020年3月、4度目のがんである大腸がんの腹腔鏡下手術を受ける。

現在は妻、娘とともに元気に暮らしている。

連絡先

メール: nori.tkym[at]gmail.com
([at]は@に読み替えてください)

※病気や病院に関する個別のご相談については、まず「治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ」をお読みの上、ご連絡いただけますようお願いします。いただくご質問に対する回答の多くが、すでにこの本に書かれております。ご理解お願いします。

※いただいたご連絡の全てにご返事できるとは限りませんのでご理解ください。

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