近藤誠医師の「抗がん剤は効かない」「人間ドックは危険」等の極論に思うこと

先日、こういう記事を読みました。
▼「人間ドック」毎年受けるほうがキケン? 医師が明かす真実 – ライブドアニュース

⚫︎人間ドックに行く人ほど寿命が縮む危険があると、医師の近藤誠氏は指摘する
⚫︎小さな腫瘍を取り除くために、リスクの高い手術を受けなければならなくなる
⚫︎がんを早期発見すれば治療しやすいというのも思い込みであると断言した

僕は近藤誠医師の主張はあまり好きではありません。


抗がん剤は効かない」とか、「がん放置療法のすすめとかいった西洋医学を頭ごなしに否定するような「極論」を、自身の著書やマスメディアで広め、いたずらに患者の不安や医療不信を煽っているように感じるからです。
という前提で、2回のがん闘病を経験した患者として、冒頭の「人間ドック」についての近藤医師の記事を読んで感じたことを書いてみます。
この記事で言われていることには一理あるようにも思います。
確かに、脳ドックで病変が見つかって、経過観察でもいいのに手術してしまい、高次脳機能障害を負ってしまう患者さんもいらっしゃるようです。
また僕の経験上、脳腫瘍も、白血病・悪性リンパ腫も、通常の人間ドックでは見つけられませんでした。
僕の脳腫瘍(グリオーマ)については、脳ドックを受けていれば見つかった可能性はありますが、高額なので受けたことはありませんでした。見つかったのは、自覚症状(チューリッヒの空港で意識を喪失して倒れた)が出た直後の検査でした。
(仮にその前に脳ドックで見つかったとしても、その後の治療(手術、放射線治療、抗がん剤治療)や予後は大きくは変わらなかったかと思っていますので、特に後悔等はありませんが)
また、僕の白血病・悪性リンパ腫(B細胞性リンパ芽球性リンパ腫)については、人間ドックでは見つけられません。自覚症状(左足の激痛)が出てからしか見つけることはできませんでした。ちなみに、現在2〜3週間に一度、虎の門病院を受診して血液検査を受けていますが、それでは再発は見つけられません。再発も、何らかの自覚症状で見つけることになります。でも、この病気の場合、自覚症状が出てからの治療で遅いということはありません。いずれにせよ血液がんは全身疾患のため、抗がん剤治療をやることになるためです。手術で腫瘍が小さいうちに取ればよい、という考え方は当たりません。
でも、こうして僕が経験したように、「人間ドックでは見つからないがんもある」「自覚症状が出てから検査しても遅くないがんもある」とは言っても、近藤医師の「一番いいのは人間ドックも検診も受けないこと」という主張は言い過ぎなんじゃないかと思います。まさに0か100かの極論のように思います。
人間ドックによって、がん以外の病気の兆候が分かることもあります。僕自身について言うと、一時、尿酸値が8.4まで上がっているのが見つかり、そのままの生活を続けていれば痛風になっていました。その後、生活を改善し、尿酸値も下がったため、痛風発症には至りませんでしたが。
また「抗がん剤は効かない」という主張も同様、極論だと思います。近藤医師自身、悪性リンパ腫や急性白血病等の一部のがんには抗がん剤は効くと言っています。極論の陰に隠れてしまっていますが。
さらに近藤医師は「手術はがんより怖い」「がんは放っておいていい(がん放置療法)」という主張もされていますが、それも極論かと思います。僕の脳腫瘍の場合、あれだけの腫瘍(下記写真参照)を放っておいたら、間違いなく腫瘍は大きくなって脳圧は亢進し、悪性度もグレード3から4に進行して手がつけられなくなり、僕はとっくに死んでしまっているものと思います。実際に手術での腫瘍摘出率が生存率に有意に影響しているというエビデンス(データ)もあります。

(手術で後頭部の脳腫瘍を摘出した後の僕の脳のMRI画像です。右上の黒い穴が腫瘍を摘出した跡です)
僕の場合、このように腫瘍が後頭部の一次視覚野にあったため、術後の後遺症で視覚障害(視野の左下4分の1が見えない)が残りましたが、これは術前に主治医から説明を受け、「視覚障害が残っても長く生きられる選択をしたい」とお願いしてあったので全く問題ありません。そのお陰で今でも(若干の不便はありつつも)生きていられるわけですから。
ただ近藤医師は、手術について、「実際にがんによる症状が出た場合、それを抑える治療法の一つとして検討すべきものである」とも言っています。こちらも極論で隠れてしまっているように思います。
そう考えると、近藤医師の主張の「極論」の部分を分かりやすく取り上げて医療不信を煽るようなメディアの報道の仕方や、同様に極端な近藤医師の著作のタイトルの付け方に気をつけ、そうした極論に踊らされないための患者側のリテラシーが必要になるのだと思います。
検査やがん治療に対する僕の考え方としては、

念のため毎年の人間ドックは受けつつも、結局それで見つけられない病気も多いので、自覚症状が出た時に早めに病院を受診し、それで異常が見つかった時は、最善の治療を受けられる病院を探し出して、そこで医師としっかり話し合って自分も納得した治療を受ける

ということが一番大切ではないかと思います。そして僕自身のそうした経験を、このブログに脳腫瘍白血病・悪性リンパ腫の闘病記として書いているつもりです。
なお、この「医師としっかり話し合って」の部分には、「医師と患者の間の情報格差を前提とした信頼関係の構築とそれに基づくコミュニケーション」という別の問題があります。それについては別途書いてみたいと思います。
<参考記事>
▼長尾和宏「近藤誠先生、あなたの“犠牲者”が出ています」【全文公開】 | 特集 – 週刊文春WEB

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