2014年07月07日

がん治療とQOLに対する患者本人の意志/うつに対するメンタルケア

先日書いた下記の記事について、Facebook上でいくつかコメントをいただき、やり取りをしました。

▼社員の言葉に涙/底なしの深い海に沈んでいく:白血病・悪性リンパ腫闘病記(24)|オーシャンブリッジ高山のブログ

まずこの記事の概要を抜粋します。

しかし、病気で心身ともに弱った僕からは、そんな強気やポジティブシンキングはすっかり消えていました。

身体的には前述のような副作用でお腹が苦しく、痛く、倦怠感も強く、とにかく何もできず、お腹を抱えて横になって辛さを耐え忍ぶしかないという状況でした。
そして精神的にも辛い時期でした。この辛い治療はまだ全6〜8コースのうちの1コース目に過ぎず、まだまだ何ヶ月も続きます。さらに、この先の見えない、辛い抗がん剤治療を受けても、この白血病・悪性リンパ腫(B細胞性リンパ芽球性リンパ腫)が治る保証はどこにもありません。最初に国立がんセンターで言われたように、5年生存率は40%です。こうした事実から、精神的にも落ち込んでいました。
体重は毎日1キロずつ減っていき、入院前から10キロ減って49キロになっていました(その後さらに減ります)。「このまま毎日1キロずつ減って、最終的にはゼロになって死んでしまうのではないか」と本気で思いました。

自分が底なしの深い海に沈んでいくようなイメージが何度も頭に浮かびました。
虎の門病院の13階の病室の窓から見える周囲のビルの屋上を、ベッドに横になって眺めながら、「あそこから飛び降りたら、この苦しみから逃れられるんだろうか」という考えが一瞬頭をよぎったこともありました。

前述のように常に強気でポジティブに生きてきた自分は、それまでの人生で自殺なんて全く考えたこともありませんでした。

がん患者が高い確率でうつ病になるということが理解できました。

以上のような内容の記事に関し、読者の方からコメントをいただいて、以下のようなやり取りをしました。ご本人の許可をいただいた上で掲載させていただきます。(一部ご本人の意向に沿って修正しています)

◼︎Sさんより

脳腫瘍(に限らず多くの癌の場合といっていいかも)を患っている場合、それ自体の影響・(手術したなら)手術の影響・抗がん剤の影響・その他のさまざまな薬の影響・もともとの性格・仕事や家庭環境など病気が原因で起きた変化による影響・などなど、様々な要因が複雑に絡み合って、鬱の症状が多かれ少なかれ出ている人が多いと思います。

ところが、癌自体を治療することがどうしても最優先となってしまい、それに伴う副作用や新たに発生する「直接または急速に命にはかかわらないけど、本人が不快にもしくは苦痛に感じる症状」は、皆、我慢したり諦めることが多いのではないのでしょうか。

それらの症状を主治医に話したとしても、すべてを取り去ることもできず、やはり我慢しなければいけない事が多いのも現状ではないでしょうか。私はそのように感じています。

なので、治療中に軽くても重くても鬱状態になってしまったら迷うことなく、精神科の力もかりるべきだと強く感じました。薬物療法だけでなく、様々な方法があるでしょうから。

私の家族が闘病していた時には、タイミングが合わず、受診することはできませんでしたが、本人は自分の考え方がおかしいのではなく、病気や治療などが原因となりえているのかもしれないという考え方ができただけでも、頑張りすぎたり自分を攻めたりすることが減り、少しではありましたが楽になったようです。

他の親族の場合も、免疫療法を受ける度に「これは絶対に効いている!」と思いながら受けていると自分で言っています。おかげで(?)、一般的に発表されている効果よりもいい結果が出ているようです。

まさに、「病は気から」の状態です。

◼︎高山より

虎の門病院では、白血病の患者さんで、メンタル面のケアをしてくれる院内のカウンセラーさんのお世話になっている方もいました(うちの奥さんも他の総合病院で患者さんを対象としたカウンセラーとして以前働いていました)。

それとは別に、この関連で言うと、一般的にがんの治療においては、がん自体の治療、つまりとにかく生存期間を伸ばすことが優先され、その他のことが後回しもしくはないがしろにされるケースが少なからずありますね。仕方が無い面もあるのですが。

例えば僕の場合、昨年の入院中に抗がん剤治療の影響で帯状疱疹を発症しました。本当はその直後に神経ブロック療法を受けていれば、その後神経痛に悩まされることはなかったはずです。その件を先日の入院中に担当医の先生と話したところ、「抗がん剤治療中は、感染のリスクや、血小板の減少などのため、神経ブロック注射はできなかった、だから抗がん剤治療が終わった直後に麻酔科(神経ブロックを担当)を受診してもらった」とのことでした。ただ、麻酔科の診察結果としては、「神経ブロック療法をやるにはもう遅すぎる」とのことでした。

それとは別に、がん治療の生殖面の影響に関しては、最近は治療前にきちんと説明され、必要に応じ精子や卵子の凍結などを行うケースがありますね。

◼︎Sさんより

Quality of Lifeですね。
これこそ、まさに病院や医師との出会いで大きく変わってきますね。
なにが各々に合っているかを考えることも必要だということを多くの方に知っていただきたいですね。

◼︎高山より

僕の場合、抑うつ傾向については、ブログに書いた抗がん剤治療中だけでなく、退院後の自宅療養初期にも出ました。つまり、家にいるだけで仕事をしていないこと、世の中に付加価値を生み出していないこと、社員はがんばってくれているのに自分は何も仕事をしていないことに対する罪悪感からくる抑うつ傾向です。これについては奥さんにいろいろ話してアドバイスされて今では解消しました。「今は元気になることが仕事。生きているだけで、会社にも家族にも価値がある」と言われて納得しました。奥さんが臨床心理士でよかったと思いました(笑)

◼︎Sさんより

巡り合わせですね

◼︎鷺島 鈴香さんより

心身が弱っている局面では、自分の限界と向き合い、それを受け入れ、自分の限界を前提に「自分は何をしたいのか」中長期的に優先順位をつけていくことが大事なのかなと思ったりしています。そして、医療の現場では、そうした患者本人の優先順位を斟酌するプロセスが足りないのではないかと思うことがしばしばあります。患者が治療方針について希望を述べる場面や、治療終了後の不安を話し合えるような場面を、治療のステップとして明確に作ってくれるといいんだけどなー。

◼︎高山より

がんの場合、患者本人はもちろん、家族も「とにかく治してください、そのための前向きな治療をしてください」というケースがよくあるような気がします。そして医師側もそれに呼応して、QOL(生活の質)よりも生存期間を伸ばすことを優先することになります。

僕自身、高校時代に父を舌がんで亡くした際も、11年前に妹を乳がんで亡くした際も、医師から余命宣告を受けてもそれを本人には告知せず、医師には最後まで積極的な治療をお願いしました。でも今は、本当にそれが良かったのか、本人に知らせた上で、残された時間の使い方を選択させてあげるべきだったのではないか、と自問自答することがあります。

昨年の入院中、ご高齢の患者さんがQOLを下げながらも苦しい治療を受けているのを見て、「もしかしたらこの治療を望んだのはご家族で、ご本人は治療の内容や効果、治療に伴う苦痛や辛さなどはきちんと理解していないのではないか?もしそれらをご本人が理解したら、この治療は受けないという判断をした可能性もあるのではないか?」と思わざるを得ないケースに何度か出会いました。

お見舞いに来るご家族が「お父さん、がんばんなきゃダメよ、絶対治すんだからね!」と言うのに対して、治療で弱ったご高齢の患者さんが力なく頷く、という図式を何度か目にしました。

もちろん、患者さんご本人が治療のメリット・デメリットをきちんと理解された上で、その厳しい治療を選択し、何としても生きようという意志を持って治療に望んでいるのであれば、全く問題ないと思います。でも、治療により、ご自身で歩くどころかしゃべるのもままならないほど弱ってしまい、それをご家族が「がんばらなきゃダメよ!」と励ましているのを見て、本当に患者さんご自身が望んだのだろうか?と疑問を持ってしまいました。自分への反省も含めて。

患者本人の意志、優先順位は重要ですね。僕の場合は自分でいろいろ調べた上で、先生を捕まえて治療方針について何度も何度も議論しましたが(今でも外来で継続中)、そんな患者はあまりいなさそうですしね(笑)

◼︎鷺島 鈴香さんより

先ほどの書き込みで、医療機関や制度側への要望のようなものにふれましたが、実は患者側についても、高山君のように積極的に情報を集め、治療方針について医療スタッフと対話しようとする姿勢が必要だと思っています(そういったことを好まない先生が多いのは残念です)。

◼︎高山より

先ほどちょうど奥さんとも話していたんですが、まさに患者の積極的な姿勢と、そうした患者と向き合う医師の姿勢も重要ですよね。
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高山の著書

「治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ」書影・表紙画像\
治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ
(幻冬舎 税込1,188円)

脳腫瘍、悪性リンパ腫(白血病)を乗り越えた闘病記。
病院選び、治療法選択、医師との信頼関係の構築、セカンドオピニオンなどの考え方も。

プロフィール

高山知朗(のりあき):

1971年長野県伊那市生まれ。伊那北高校、早稲田大学 政治経済学部卒業。

アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)戦略グループ、Web関連ベンチャーを経て(株)オーシャンブリッジ設立、代表取締役社長就任。現在、同社ファウンダー。横浜市在住。

2011年7月に脳腫瘍(グリオーマ)の摘出手術。後遺症で視野の左下1/4を失う

2013年5月から悪性リンパ腫(B細胞性リンパ芽球性リンパ種/急性リンパ性白血病)の抗がん剤治療。合併症で帯状疱疹後神経痛も発症し、現在も激しい痛みと闘う。

2016年年9月、幻冬舎より「治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ」を出版。

2017年2月、3度目のがんである急性骨髄性白血病を発症、同年4月にさい帯血移植治療を受ける。

2020年3月、4度目のがんである大腸がんの腹腔鏡下手術を受ける。

現在は妻、娘とともに元気に暮らしている。

連絡先

メール: nori.tkym[at]gmail.com
([at]は@に読み替えてください)

※病気や病院に関する個別のご相談については、まず「治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ」をお読みの上、ご連絡いただけますようお願いします。いただくご質問に対する回答の多くが、すでにこの本に書かれております。ご理解お願いします。

※いただいたご連絡の全てにご返事できるとは限りませんのでご理解ください。

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