外科手術にIoTとビッグデータを:女子医大の第4次医療革命「Medicine 4.0」

Facebookでこちらの記事が話題になっていました。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20150601/421054/?ST=ndh&P=1


外科手術の現場でもIoT(Internet of Things)やビッグデータ等の最新テクノロジーが革命を起こしつつある、という記事です。

工場内外の機器やサービスを通信ネットワークでつなぎ、実空間のセンシング技術と情報空間のコンピューティング技術を連携させて新たな価値を生み出す「Industry 4.0」。その医療版ともいえる「Medicine 4.0」を提唱する脳神経外科医がいる。東京女子医科大学・早稲田大学共同大学院 共同先端生命医科学専攻 教授の伊関洋氏だ。

Medicine 4.0の具体的な姿を示すものとして、同氏が東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 教授の村垣善浩氏らと開発を進めているのが「SCOT(Smart Cyber Operating Theater)」と呼ぶ次世代手術システムである。手術室内の医療機器をネットワークで接続し、各機器の稼働状態や医療スタッフの動きなどをリアルタイムに解析。この結果を手術ナビゲーションなどに反映することで、現場の「意思決定を自律的に支援する」(伊関氏)システムだ。熟練医の経験や技量に頼るのではなく、科学的根拠やデータベース、エレクトロニクスやメカニクスを駆使して個々の患者に対して最適な治療を実現する。

この「熟練医の経験や技量に頼るのではなく、科学的根拠やデータベース、エレクトロニクスやメカニクスを駆使して個々の患者に対して最適な治療を実現する。」というところが非常に大切な部分だと思います。
これまで外科医の世界は、腕と経験と勘がものを言う世界でした。しかしそれらは若い医師に簡単に伝承できるものではありません。女子医大はその問題を最新のテクノロジーを活用することで解決しようと試みてきました。

伊関氏と村垣氏のグループは、東京女子医科大学において、日本に先駆けて第3次医療革命に力を入れてきた実績がある。手術室にMRIを設置し、術中画像診断とそれに基づく手術ナビゲーションを利用する「術中MRI」を2000年に導入。現在までに1000例以上の脳神経外科手術に適用してきた。神経膠腫(グリオーマ)の術後5年生存率で全国平均を上回る治療実績をあげており、「開頭部の反対側に発生した出血を発見できたりするなど、手術の安全性向上にも大きく寄与している」(伊関氏)。

僕自身、2011年にこの「術中MRI」を使った手術で村垣先生に命を救っていただきました。村垣先生は僕の脳腫瘍(グリオーマ)の主治医です。女子医大で村垣先生と丸山隆志先生の手術を受けていなければ、僕はとっくにこの世にいなくてもおかしくありません。
上記の記事中の記載はかなり控えめな表現ですが、グリオーマ治療における女子医大の治療成績は、全国平均と比べてかなり高い数値を示しています。詳しくは下記記事をご参照ください。
▼東京女子医科大学 脳神経外科のグリオーマ(神経膠腫)治療成績(生存率)が更新されました|オーシャンブリッジ高山のブログ
女子医大では、その術中MRIからさらに進んで、手術室の様々な機器をネットワーク接続することで、さらなる治療成績の向上を目指しているということです。

そして第4次医療革命では、医療機器を相互に接続し、センシング技術とコンピューティング技術を使って手術のアウトプットを最適化する。すべての手術情報はサーバーに格納し、ビッグデータとして解析。どのような症例に対してもリアルタイムに最適な意思決定を下せるナビゲーションシステムを構築する。まさにIndustry 4.0やIoT(internet of things)、CPS(cyber physical systems)と呼ばれるコンセプトの外科医療版といえる。

まさにIoTやビッグデータなど、産業界の最新ITを活用した医療革命です。

伊関氏らの究極の目標の1つは、「治療効果全体を包括的にシミュレーションできる“病態デジタル生体モデル”を構築する」(同氏)こと。そしてこれが可能にするのは「未来予測手術」だ。手術中または術前の段階で、術後を精度よく予測できるようにする。

その先駆けとなる取り組みを、同氏らは術中MRIを用いた情報誘導型の脳神経外科手術で実践してきた。例えば、術式と術後障害や5年生存率の相関などを定量化してきた。術前や術中に得られる情報を“術後”のために生かすことの重要性に、早くから着目してきたわけだ。

この「術式と術後障害や5年生存率の相関などを定量化」について、一部は前述のように女子医大のホームページにデータが公開されています。

SCOTはここにきて、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクト「未来医療を実現する先端医療機器・システムの研究開発」(2014〜2019年)に、開発課題「スマート治療室」として採択された。2015年度からは同年4月に発足した日本医療研究開発機構(AMED)が引き継ぎ、東京女子医科大学のほか、広島大学や信州大学、デンソーなどが参画する。世界に先駆けて「Medicine 4.0」の実現を目指す——。その試金石となるプロジェクトだ。

女子医大の取り組みがすばらしいと感じるのは、自分たちが開発した手術設備や治療方法を囲い込むことをせず、積極的に他の病院にも展開することで、全国的な治療成績の向上に貢献しようとされていることです。
広島大学や信州大学はこのプロジェクトで術中MRIを導入する計画とのことです。村垣先生たちは、そうした他の大学病院の先生方のMR手術の見学受け入れや指導も行っていると伺いました。こうした現場の先生方の治療成績向上に向けたひたむきな努力には、本当に頭が下がります。
この女子医大の取り組みが全国の病院に広がることで、グリオーマの全国的な治療成績が向上し、より多くのグリオーマ患者さんの命が救われることを願っています。

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