2014年04月11日

治療方針に関して主治医と繰り返した議論の中身: Hyper-CVAD/MA+リツキサン療法と造血幹細胞移植

前の記事からの続きです。

僕は悪性リンパ腫・白血病(B細胞性リンパ芽球性リンパ腫)の治療方針に関して、昨年の入院中に何度も主治医のGY先生、担当医のMY先生はもちろん、血液内科部長で僕が虎の門病院を選んだ理由ともなった谷口先生とも議論しました。

議論の内容は退院時の記事にも書きましたが、維持療法の方針を検討している今、改めて議論のもととなった海外論文へのリンクを含めて、まとめておきます。

入院中は、特に担当医のMY先生を、一時は毎日のように捕まえては、ネットで見つけたB細胞性リンパ芽球性リンパ腫やB細胞性急性リンパ性白血病の治療法に関する海外の論文をぶつけて議論していました。

そうした議論の結果、最終的に、米国最大のがん専門病院であるMD Anderson Cancer Centerの下記の論文にあるレジメン(Hyper-CVAD/MA + リツキサン療法)に従った治療により、造血幹細胞移植(骨髄移植、臍帯血移植)をせずに、抗がん剤治療だけで治癒を目指す、という方針に決めました。

▼Chemoimmunotherapy With a Modied Hyper-CVAD and Rituximab Regimen Improves Outcome in De Novo Philadelphia Chromosome Negative Precursor B-Lineage Acute Lymphoblastic Leukemia(PDF)

(論文タイトル日本語訳:改良型Hyper-CVAD及びリツキシマブのレジメンによる免疫化学療法は、初発のフィラデルフィア染色体陰性B細胞性急性リンパ性白血病の治療成績を改善)

この論文タイトルにある「フィラデルフィア染色体陰性B細胞性急性リンパ性白血病」は、僕の病気と同じです。僕の病気は前に書いたように、悪性リンパ腫でもあり、白血病でもあります

幸いなことに、この議論の前、入院した段階で、先生方は僕の抗がん剤治療にHyper-CVAD/MA療法を選択してくれていました。そして、その後の検査により、僕のリンパ腫細胞にはCD20タンパク質が存在する(CD20陽性である)ことが分かり、数年前に保険適用となったばかりのリツキサンという新しい分子標的薬が使えることとなったため、治療に加えられました。僕が読んだ論文でもリツキサンは予後を改善するというエビデンスが多数あったため、CD20陽性が分かった時にはうれしかったのを覚えています。

前出の論文では、このレジメン(Hyper-CVAD/MA + リツキサン療法)で、僕の年齢の場合、3年生存率が66%、3年寛解維持率が75%と、それなりに期待できる数値となっています。造血幹細胞移植なしの、抗がん剤治療のみでの数値です。

でも、虎の門病院の先生方の感覚はこの数値と大きく乖離があり、「抗がん剤治療だけでは、3分の1の患者さんしか治らない。他の3分の2の患者さんは再発してしまう。だから治癒を目指すなら造血幹細胞移植がいずれ必要」というものでした。

治療に関する僕の基本的な考え方は、僕の人生の目標である、「娘の二十歳の誕生日に娘と奥さんとおいしいお酒で乾杯してお祝いする」を実現できる可能性が最も高い治療を選択する、というものです。これは最初に初診で虎の門病院の谷口先生を受診した際にも先生に伝え、その後、主治医、担当医の先生や担当の看護師さんにも伝えられていました。

先生方の感覚を尊重すると、抗がん剤治療後に造血幹細胞移植をするのが治癒の可能性が高そうですが、移植をすれば必ず治るというわけではなく、一般的に2〜3割、虎の門病院で1〜2割と言われる移植関連死(移植が原因で死んでしまう)や、移植しても1〜2割は再発してしまうなどにより、移植後の長期生存率は6〜7割程度と先生から説明されていました。

また、僕のような急性リンパ性白血病の場合、移植をすべきか、するならいつすべきか(抗がん剤治療後の第一寛解期にすべきかどうか)について、日本の学会でもアメリカの学会でも明確な方針が出ていない、つまり十分なエビデンスがない、ということもありました。

だから先生方も、はっきりと「移植をすべきです!」とは言えず、移植をした場合とそうでない場合の生存率のグラフを書きつつ、双方の治療のメリット・デメリットを説明してくださった上で、「移植をすべきかどうか、はっきりどちらがいいとは言えません。あとは高山さんの選択です」と言われていました。

そして僕には、造血幹細胞移植治療に対する恐怖感もありました。周囲の移植後の患者さんはみな、深刻な副作用やGVHD(移植片対宿主病)との厳しい戦いを強いられていました。僕の抗がん剤治療の副作用とは比べ物にならないほど辛そうでした。また1〜2割の移植関連死も恐れました。移植をしても、それで死んでしまったら、悔やんでも悔やみきれません。

また、仲の良い看護師さんに治療方針の相談をしたところ、「高山さんだから言いますけど、移植の判断は、できるだけ先延ばしにした方がいいですよ。それだけ大きな決断です」「知り合いの患者さんは、移植後、普通の生活ができるようになるまでには3年かかったと言っていました」と言われたこともあります。さらに担当医のMY先生からも「移植をしたら、いろいろな意味で、自分の身体がそれまでのようにはいかなくなります」と言われたことも、頭に残っていました。

だから、抗がん剤治療のみで、移植治療をしなくても治癒が望めるならそれが一番良いと考え、その裏付けとなるような論文を、主にアメリカの医療系サイトで検索して探しました。最終的には、20〜30ほどの英文の論文を、PDFでiPadにダウンロードして、GoodReaderというアプリで辞書とマーカーを引きながら読み込んだと思います。その結果、見つけたのが前出の論文でした。

僕は前出の論文を読み込み、先生方、特にMY先生とも議論する中で、入院中のHyper-CVAD/MA + リツキサン療法については前出のMD Andersonと虎の門病院のやり方は基本的に同じですが、退院後の維持療法(maintenance therapy)に違いがあることに気づきました。

MD Andersonでは、維持療法として、2年半に及ぶ抗がん剤の飲み薬(ロイケリン、メトトレキサート、オンコビン、プレドニンの4種)の服薬に加え、退院の半年後と一年半後に、入院して当初と同じHyper-CVAD/MA + リツキサンの点滴治療を1コースずつ行う(Hyper-CVAD 1コース、MA 1コース)、ということになっていました。

しかし、虎の門病院では、基本的にHyper-CVADなどの強力な、つまり副作用の強い抗がん剤治療を長期に渡って行った患者に対しては、退院後はQOLを優先して維持療法は行わない、という方針でした。

そこで僕は、先生方に、「退院後も、維持療法として、このMD Anderson Cancer Centerの論文と同じ治療を受けさせてください」、とお願いしていました。基本的には了承いただきました。

そして退院して3ヶ月以上経った今、主治医のGY先生と、2〜3週間おきの外来診察のたびに、この維持療法について相談しています。先生は、維持療法として、抗がん剤の飲み薬の服薬については了解していただいています。

ただし、昨年の入院中に使った結果、副作用として手足のしびれが出て、そのしびれが足裏にまだ残っているオンコビンについては、服薬から外し、ロイケリン、メトトレキサート、プレドニンの3種のみとする、ということで合意しています。

ちなみにオンコビンを加えた4種になると、MD Andersonと同じになります。またこの4種の服薬は、国内でも、急性リンパ性白血病の標準的な維持療法とされています。

ただ、MD Andersonのような、再度入院しての抗がん剤治療については、副作用や感染症等のリスクを考えると、そこまでやるべきではないのではないか、というご意見です。


特に僕の場合、いまだに血球が十分に上がり切っていません。白血球も2,800で、日常生活には問題ありませんが、維持療法としての服薬治療を始めるにはまだ低いです。服薬を始めればまた血球の数は下がり、恐らく500を切ってしまい、そうすると免疫力が下がり、感染症等のリスクが高まります。そうなれば、さらに血球数を下げる強い点滴治療はどちらにしても当分はできません。

GY先生によると、他の先生ともカンファレンスで話し合った結果、「高山さんの場合は維持療法をやるのであれば服薬が適切であろう」という判断になった、とのことでした。

ただ、根本的に、維持療法についてはあまり論文やエビデンスがない、という問題があります。GY先生も、「再発を防ぐために2年なり2年半なりの期間に行う維持療法として、抗がん剤の点滴のような強い治療をさらに行うべきなのか、それよりも服薬治療のような弱い治療を長く続けた方がいいのかという問題だが、これについてはデータがない」とのこと。

このGY先生の話を聞いて、入院中は、維持療法としてMD Andersonと同じ服薬+点滴を考えていた僕としては、どうすべきか、悩んでしまいました。

もちろん、1〜2ヶ月とは言え、あの辛い入院生活に再び戻るのは非常に抵抗がありますし、抗がん剤の副作用ももうたくさんです。家族と離れての生活も考えられません。

ただ、当初考えていたMD Andersonの維持療法から入院しての点滴を省いてしまったことで、再発してしまったら元も子もありません。

この点は、現時点では自分の中で結論が出ていません。そこでGY先生には、入院中にかなり議論をさせていただいた担当医のMY先生に改めてお会いする時間を取っていただいて、ご相談したいとお願いしました。これは快く了承いただき、MY先生から別途ご連絡をいただくことになりました。

さらに、GY先生からは、「セカンドオピニオンを聞きに行きますか?」とも言われたのですが、虎の門病院は白血病の移植治療で国内はもとより世界的にも有数の病院です。もっと経験値の高い病院もそうそうありませんし、恐らく他の病院に行っても、虎の門病院と同じ結論、つまり急性リンパ性白血病での標準治療とされている前述の4種の抗がん剤の飲み薬の服薬が適当、と言われることはほぼ目に見えています。

ですからセカンドオピニオンは遠慮しました。それよりも、入院中に議論させていただいたMY先生ともう一度お話しをして、自分自身、納得したいという気持ちの方が強いと感じました。

いずれにせよ、一刻を争うような状況ではなく、まずは白血球数がもう少し回復してから、抗がん剤の飲み薬の服薬をスタートするという段階なので、点滴治療を行うかどうかは急いで決める必要はないのですが、今後の再発を防ぐための重要な判断なので、じっくり考えつつ、先生方のご意見も聞きつつ、これまで通り100%納得した上で、決めたいと思います。

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高山の著書

「治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ」書影・表紙画像\
治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ
(幻冬舎 税込1,188円)

脳腫瘍、悪性リンパ腫(白血病)を乗り越えた闘病記。
病院選び、治療法選択、医師との信頼関係の構築、セカンドオピニオンなどの考え方も。

プロフィール

高山知朗(のりあき):1971年長野県伊那市生まれ。伊那北高校、早稲田大学 政治経済学部卒業。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)戦略グループ、Web関連ベンチャーを経て(株)オーシャンブリッジ設立、代表取締役社長就任。現在、同社ファウンダー。横浜市在住。

2011年7月に脳腫瘍(グリオーマ)の摘出手術。後遺症で視野の左下1/4を失う。2013年5月から悪性リンパ腫(B細胞性リンパ芽球性リンパ種/急性リンパ性白血病)の抗がん剤治療。合併症で帯状疱疹後神経痛も発症し、現在も激しい痛みと闘う。2016年10月に脳腫瘍、悪性リンパ腫の2つのがんから卒業。同年、幻冬舎より「治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ」を出版。

2017年2月、3度目のがんである急性骨髄性白血病を発症、同年4月にさい帯血移植治療を受ける。現在は妻、娘とともに元気に暮らしている。

連絡先

メール: nori.tkym[at]gmail.com
([at]は@に読み替えてください)

※病気や病院に関する個別のご相談については、まず「治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ」をお読みの上、ご連絡いただけますようお願いします。いただくご質問に対する回答の多くが、すでにこの本に書かれております。ご理解お願いします。

※いただいたご連絡の全てにご返事できるとは限りませんのでご理解ください。

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