血液内科部長の谷口先生がふらっと病室に現れてビックリ:白血病・悪性リンパ腫闘病記(43)

前回の闘病記からの続きです。
◼︎2013年7月2日(火)。入院51日目。抗がん剤治療開始から43日目。
入院中の久しぶりのカップラーメン


この前日から、右腕の点滴のラインを入れていた箇所が痛みだし、37〜38度の熱が出ていたのですが、この日もそれは続き、前日に続いて朝から抗生剤の点滴を打ちました。それでも一日中、熱は37度台で推移しました。
朝、担当医のMY先生が来た際は、こんな話をされていました。

血球が立ち上がってくれば(回復してくれば)、この週末に外泊できそうです。でも、右腕の腫れが治まらないと難しいですね。熱があるのもその炎症のせいだと思います。でも昨日からの抗生剤の点滴で、大分腫れもひいてきてるので、この治療がうまく進めば週末は外泊できると思いますよ。

外泊できそうというのはうれしいニュースでした。
さらにその後、看護師さんが来て、看護師さんの付き添いなしで一人で歩いてもいいですよ、というお許しが出ました。4日前に脱衣所で意識を失って倒れて以来、トイレに行くにも歯を磨きに行くにも、常にナースコールで看護師さんを呼んで付き添ってもらわねばなりませんでした。それが解除されたのです。ただしこのフロア限定で、検査などで一階に行く時は引き続き付き添いが必要、とのこと。
それでも、病室を出るたびにいちいち看護師さんを呼ばなくても良くなったのは、楽になりました。うれしくて、お昼に早速共有の流し台に行き、給湯器でカップラーメンにお湯を入れてしまいました(笑)。
そしてこの日の夕方、びっくりすることがありました。虎の門病院の血液内科部長の谷口先生が、当然ふらっと、僕の病室に来てくださったのです。谷口先生は、僕が虎の門病院を選ぶ決め手となった先生であり、東京女子医科大学病院の村垣先生に紹介していただいて、最初に外来で診察していただいた先生です。
そしてこの前日の主治医のGY先生から僕と家族への治療方針の説明の際、僕からGY先生に、「谷口先生にも相談させていただけませんか?」とお願いしていたのです。
GY先生はすぐに谷口先生に話してくださったようで、その翌日にすぐに谷口先生が話しにきてくださいました。驚きました。
谷口先生はふらっと来て、カーテンを開け、僕の顔を見ると、

ちょっと痩せた?

と言いました。初めての外来診察の時のことを覚えてくださっていたようで、うれしかったです。谷口先生は、GY先生から、僕の治療の状況はもちろん、海外の論文を読んでいることも聞いていたようで、紙に図を描きながら、下記のようなお話をしてくださいました。

結論から言うと、高山さんの場合は、移植をした方が長く生きられる確率は高いのではないかと思う。

再発してからの移植だと、第二寛解に持ち込めないケースもあるし、また再発がどこに起こるかによっては(脳などの中枢神経系など)、治療が難しくなる。そして結果的に治療期間が非常に長くなる。

自分はこれまで移植治療を推進してきたが、化学療法だけで治る患者さんの場合は、もちろんその方がいい。(僕の主治医の)GY先生は、化学療法の専門家で、もちろん移植もたくさん経験がある。だから高山さんのようなケースは、移植治療ではなく化学療法の専門家に診てもらうのがいいと考えた。

この移植をすべきかどうかの話は、移植を受けた患者さんはみんな通っている壁。

MD Anderson Cancer Centerの論文のデータは、確かに化学療法による生存率が高いが、いつも、対象としている患者数が少ない。そして、実際に日本で同じ化学療法をしても、彼らのデータより低い値(生存率)が出る。だから我々としてはあの論文より生存率は少し低めに見ている。

移植は確かに大変な治療。だから、70歳の患者さんだったら移植は勧めない。50代の自分でも、実際に白血病になったら移植を受けるかどうかは分からない。

でも、高山さんはあと最低17年生きる必要がある。そのために病気を治さないといけない。

B-LBL(B細胞性リンパ芽球性リンパ腫)は、急性リンパ性白血病と同じ治療をする。白血病患者に対しては、もう何十年も移植をやってきた。その経験から、高山さんの場合は恐らく、第二寛解ではなく、早い段階で移植をした方が、治せる確率は上がるのではないかと思う。

谷口先生は、僕のベッドサイドの椅子に座り、このようなお話を、紙に生存率のグラフを描きながら、丁寧に説明してくださいました。
虎の門病院の血液内科には、常時100人以上の患者さんが入院しています。重篤な患者さんも少なくありません。その全員の治療の責任を、谷口先生は部長として負っています。
だから、日常の治療は、谷口先生の下についた主治医と担当医の先生が診ることになっています。でも谷口先生は、常に一人一人の患者さんの検査データに目を通し、主治医や担当医からの話を聞き、それぞれの患者さんの状況を把握した上で、主治医や担当医と治療方針を相談して決めているようです。
この治療体制の話は、それまでも担当医のMY先生からも聞いていましたが、実際に改めて谷口先生と話してみて、谷口先生は僕の状況をよく理解されているな、と実感しました。
数十分も話し、僕の質問にも丁寧に答えてくださった後、谷口先生は、

でも今すぐ結論を出さなきゃいけない話ではないので、また話しましょう。

と言って、僕の病室を後にされました。
谷口先生からは、自分は移植を推進してきたけれども、化学療法で治るのであれば当然その方がいいので、できるだけ中立的に判断しよう、と努めて話をされているのが感じられました。その上で、僕の場合は、やはり移植をした方が、病気が治って長く生きられる可能性は高いのではないかと思う、ということでした。
これでまた僕の迷いは深くなりました。「やはり移植か・・・」という思いにまた傾いていきました。
でも、谷口先生が、最初の外来診察の時に僕が言った、

17年後の娘の20歳の誕生日を、娘と家内と僕の3人でおいしいお酒で乾杯してお祝いするのが、僕の人生の目標です。

という話を覚えていてくれて、

高山さんはあと最低17年生きる必要がある。

と先生の方から言及してくれ、それを前提に話をしてくださったのは、うれしかったです。本当に患者の目線で治療に当たられているんだな、と思いました。
そして、この病院を選んだのは正解だった、と改めて実感しました。