寛解後の維持療法・強化療法について担当医と相談/5年生存率は6〜7割?

昨日、虎の門病院に行き、入院中に大変お世話になった担当医のMY先生に退院後初めてお会いしてきました。
退院後の外来診察は全て主治医のGY先生に診ていただいていたので、MY先生とお会いするのは4ヶ月ぶりです。そしてMY先生とは、入院中、僕の病気(B細胞性リンパ芽球性リンパ腫・B細胞性急性リンパ性白血病)(B-LBL/B-ALL)の治療方針について、海外の論文を見ながらかなりの時間、議論させていただきました。
そのため、今後の維持療法について意思決定をする上で、できればMY先生にもご意見をお聞きしたい、と以前の外来診察の時にGY先生にお願いしていました。
B-ALL(B細胞性リンパ芽球性リンパ腫)の英文論文


MY先生は、僕とじっくり話をする時間を取るためか、他の患者さんの診察が全て終わった後に、最後の患者として、僕を診察室に呼んでくださいました。
そして、準備のために、僕が読んだことのなかった急性リンパ性白血病、悪性リンパ腫に関する最近の海外の論文を印刷してくださっていました。
先生は、僕のこれまでの治療の経過や、GY先生との診察内容、そしてこれらの英文論文を見ながら、今後の寛解後維持療法について説明してくださいました。そしてこちらからの質問にも非常に丁寧に答えてくださいました。診察時間は1時間以上にも及びました。
以下、MY先生との話の概要をまとめておきます。
ーーーここからーーー
高山さんのような急性リンパ性白血病・B細胞性リンパ芽球性リンパ腫について、Hyper-CVAD/MA療法で寛解した後の維持療法については、行うべきかどうか、日本の学会では共通のガイドラインがありません。やっている病院もあればやっていない病院もあります。
ただ、「維持療法は必要ない」という明確なデータもありません。海外の治療ガイドラインを見ると、T細胞性や成熟B細胞性の場合はやらなくてもよいが、高山さんのような前駆B細胞性の場合はやるべきだとなっています。(下記は、海外の治療ガイドラインの中でMY先生が赤線を引いてくださった箇所の抜粋と翻訳)
B-ALL(B細胞性リンパ芽球性リンパ腫)の英文論文/維持療法

長期維持療法
寛解後の地固め療法の後は通常、長期の維持療法を行います。毎日のメルカプトプリンの経口での服薬と、週次でのメソトレキサートを、2年かそれ以上続けます。時には定期的な再強化療法(例えばビンクリスチン、プレドニゾン、その他)を加えます。維持療法を行わない場合、前駆B細胞性急性リンパ性白血病の治療成績は顕著に悪化します。しかし前駆T細胞性急性リンパ性白血病の場合は、維持療法を行わなくてもそれほど治療成績は悪化せず、また成熟B細胞性急性リンパ性白血病の場合は全く悪化しません。

また寛解後の治療としては、維持療法としての長期間の抗がん剤の飲み薬(ロイケリン(メルカプトプリン)、メトトレキサート、オンコビン(ビンクリスチン)、プレドニンの4種)の服薬と、強化療法としての抗がん剤(Hyper-CVAD/MA)の入院しての点滴があります。前者については、ある国内の学会では標準の維持療法とされているため、実施している病院もあります。後者については、アメリカのMD Anderson Cancer Centerでは実施されていますが、国内ではまだ日本人患者に対しての効果が検証されていません。強い治療のため、感染症のリスクも高くなります。
また、仮に今後再発してしまった時のことも考えておく必要があります。再発した場合、早急に抗がん剤で再寛解に入れて造血幹細胞移植に持っていく必要があります。その時に、もし初回寛解後の維持・強化療法としてHyper-CVAD/MAのような強い抗がん剤を使っている場合、それを時間を空けずに再び使うわけにはいかなくなり、使える抗がん剤の種類が制限されてしまいます。
そのような点から、高山さんの場合、今後は維持療法として抗がん剤の飲み薬(ロイケリン(メルカプトプリン)、メトトレキサート、オンコビン(ビンクリスチン)、プレドニンの4種)の服薬(ただしオンコビンは入院中に副作用が出たため除外し3種)が勧められる、という考えです。
高山さんは入院中から、造血幹細胞移植をせずに、化学療法だけで病気を克服する、と意志を固められました。その点を考えると、もし維持療法をせずに再発して、移植をせざるを得なくなってしまった場合に、「ああ、あの時、維持療法をやっておけばよかった・・・」と大きく後悔することになるということも考えられます。この観点でも、維持療法を行うべきだと思います。
虎の門病院としては、維持療法に消極的だということは全くありません。ただ、GY先生も私も気にしているのは、高山さんの白血球の数です。3月半ばに1600、その後3200に上がったものの、4月に入ってからは2800、2500とまた下がっています。入院中の長期の強い抗がん剤治療に加え、その後の放射線治療の影響もあって、回復が遅れているものと思います。これが今後回復していけば、あまり適当なことは言えませんが例えば夏頃には、維持療法が開始できるのではないかと思います。高山さんは入院中も、最後の方のコースでは、血球の立ち上がりも早かったですからね。
維持療法は、前述の抗がん剤の飲み薬を飲みますので、点滴のような強い副作用はそれほどありません。でも、骨髄抑制による血球の減少や悪心、気持ちの悪さはどうしても出てしまいます。
この維持療法を2年か2年半ほど続けます。随時、白血球の数をチェックしながら続けていきます。
この白血病や悪性リンパ腫の分野は、どんどん新しい薬が開発され、日本でも臨床試験を通っていきます。今後そうした新しい薬が出てきたら維持療法を切り替えることも考えられます。
また大切なのは、個々の患者さんによって、そして患者さんの状態によって、治療方法は変わってくるということです。
そして、同じ治療方法でも、病院による経験の違いで、治療成績に差が出てきます。例えば移植治療については、虎の門病院は東大病院とも連携し、他の病院に比べかなりの経験を蓄積しています。
この病気は、1年以内の再発も多い病気です。高山さんは放射線治療が終わってからまだ3ヶ月です。
高山さんの今後の状態を見ながら、一緒に最適な治療を選択していきましょう。
ーーーここまでーーー
MY先生がここまで丁寧に説明してくださって、これまでGY先生からも説明いただいていた維持療法の方針について、白血球数が回復次第、抗がん剤の飲み薬を開始するということで、100%納得することができました。
MY先生には、GY先生に聞いたのと同様、この質問をしてみました。

今の僕の状況で、先生は、僕はどのくらいの確率で治癒すると思いますか?

MY先生は非常に答えにくそうにされていましたが、こう答えてくださいました。

安易なことは言えませんし、自分よりも経験豊富なGY先生と少し違う答えにもなってしまいますが、私としては、移植治療も含めた急性リンパ性白血病の5年生存率である60〜70%には、高山さんは入っているのではないかと思います。

主治医のGY先生の答えは80〜90%
そして担当医のMY先生の答えは60〜70%。
いずれも、最初の診断時に聞いた5年生存率40%という数字、そして入院中に聞いた治癒率3分の1(33%)という数字よりも、非常に高い数字です。
今後始まる維持療法は、期間も2年以上と長くなりますし、その分、副作用も怖いところです。
でも、自分としては、33%でも40%でも70%でも90%でもなく、100%治ることを信じて、つまり100%再発しないことを信じて、維持療法に臨んでいきます。自分にとっては、0か100か、ですからね。

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「寛解後の維持療法・強化療法について担当医と相談/5年生存率は6〜7割?」への2件のフィードバック

  1. こんにちは
    先日はコメント、メールありがとうございました。
    維持療法についての文章や意見、Drの話はとても参考になりました。
    最新の論文についてもDrとの話の経緯、解説はなかなか知ることができるものではなく大変助かりました。
    来月受診時に妻と一緒に現Drにそれらの知識も踏まえじっくり話をしてくる予定であります。
    一点気になりましたのは
    「維持療法を行わない場合、前駆B細胞性急性リンパ性白血病の治療成績は顕著に悪化」
    とある一方HPによっては維持療法をやらないこともありうる、という事です。
    白血球数や寛解療法、その他個人の状況によって変わってくるとは思うのですが。
    すべての人にとって目指すところは100だと思います。
    納得した上での治療が一番だと感じます。

  2. よーたさん、
    僕が引用しましたガイドラインはアメリカのガイドラインですので、日本でのガイドラインとは異なる、ということかと思います。アメリカでは、B-ALLに対してはどうやら維持療法を行った方が治療成績が良い、というデータが揃ってきて、共通認識になりつつあるが、日本ではそこまでのエビデンスはなく、まだ共通認識の確立には至っていない、ということかと思います。
    ぜひ主治医の先生としっかり話してみてください。

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