悪性リンパ腫の治療法・レジメンの選び方(CHOP療法、Hyper-CVAD/MA療法、リツキサン等)

悪性リンパ腫には30種類以上の病型があると言われています。生検により組織を採取し、病理検査をして、どのタイプなのかを特定してから、最適な治療法を選択することになります。


ちなみに僕の悪性リンパ腫は「B細胞性リンパ芽球性リンパ腫」というタイプで、腫瘍細胞自体は「急性リンパ性白血病」と同じです。よってこれらは同じ病気であり、同じ治療法を適用すべき、と言われています。(僕が病気のことを書くときに「白血病・悪性リンパ腫」と併記しているのはこの理由からです)
▼リンパ芽球性リンパ腫:[がん情報サービス]

がん細胞の本質は、急性リンパ性白血病(Acute Lymphocytic Leukemia:ALL)と同じであると考えられます。このため、WHO分類では「前駆TあるいはBリンパ芽球性白血病/リンパ腫」(Precursor T- or B-Lymphoblastic Leukemia/Lymphoma)として、一群の疾患に分類しています。LBLとALLは、骨髄に浸潤(しんじゅん)しているがん細胞の割合で区別しており、浸潤の割合が20%未満の場合はLBL、20%を超える場合にはALLという診断になります。

このタイプは悪性リンパ腫の中でも比較的珍しく、かつ、悪性度の高いタイプです。
▼リンパ芽球性リンパ腫:[がん情報サービス]

リンパ芽球性リンパ腫(Lymphoblastic Lymphoma:LBL)は、非ホジキンリンパ腫の中でも悪性度の高いリンパ腫に分類される疾患群です。小児では、非ホジキンリンパ腫の約40%を占めるのに対し、成人では非ホジキンリンパ腫の2〜4%にすぎない、比較的まれな疾患です。リンパ芽球性リンパ腫は、「B細胞性(B-LBL)」と「T細胞性(T-LBL)」に分けられ、両者では異なった病状を呈します。B細胞性(高山注: 恐らく「リンパ芽球性リンパ腫」の間違い)の80%以上がT細胞性であり、B細胞性は5〜20%と比較的少ないです。

なお、悪性リンパ腫には、大きく分けてホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つがあり、日本では非ホジキンリンパ腫が約90%です。
つまり、悪性リンパ腫全体のうち、「B細胞性リンパ芽球性リンパ腫」の占める割合は、90% x 2% x 5% = 0.09% となります。
日本では悪性リンパ腫にかかる患者の数は年間10万人あたり約10人です。日本の人口を約1.3億人とすると、毎年1.3万人の患者が悪性リンパ腫にかかっていることになります。僕と同じ「B細胞性リンパ芽球性リンパ腫」については、年間11.7人(1.3万人 x 0.09%)しか患者がいないことになります。各病院が経験する症例数も相当少ないものと思われます。
ちなみに僕の脳腫瘍(グリオーマ・神経膠腫)については、患者数はこうなっています。
▼神経膠腫:[がん情報サービス]

国内における脳腫瘍(転移性脳腫瘍を除く)の発生頻度は、人口10万人に対し12人程度とされ、欧米とほぼ同じであるといわれています。神経膠腫はそのうちのおおよそ30%を占め、最も多い腫瘍です。

同様に日本の人口を約1.3億人とすると、毎年4,680人(1.3億人 / 10万人 x 12人 x 30%)がグリオーマ(神経膠腫)にかかっていることになります。
さて、話を悪性リンパ腫に戻します。
前述のように、悪性リンパ腫には30種類以上もタイプがあり、それに応じて最適な治療法(レジメン)を選択することが重要となります。しかし、B細胞性リンパ芽球性リンパ腫のように患者数が少ないと、参考になる過去の症例も限られたものとなります。
非ホジキンリンパ腫の治療法(レジメン)としては、CHOP(チョップ)療法あるいはそれにリツキサン(リツキシマブ)を加えたR-CHOP療法がよく知られています。他にも、ESHAP療法、DHAP療法、ABVD療法など、様々なレジメンがあります。
その中で、僕の場合は、治療開始の段階から、虎の門病院の先生方はHyper-CVAD/MA(ハイパーシーバッドエムエー)療法を選択してくださっていました。国内ではあまり目にしないレジメンでしたが、実際、入院中にインターネットで海外の最新の論文を調べた際には、僕と同じB細胞性リンパ芽球性リンパ腫や急性リンパ性白血病の治療成績向上に関する論文は、ほとんどがHyper-CVAD/MA療法、およびそれに分子標的薬のリツキサンを加えたR-Hyper-CVAD/MAに関するものでした。僕も治療開始後の検査で腫瘍細胞のCD20タンパク質が陽性だと判明してからは、リツキサンも使ってもらいました。
入院中に自分で海外の論文を調べ、それを先生たちにぶつけて議論を繰り返す中で分かったのですが、虎の門病院の血液内科の先生方は本当によく勉強しています。忙しい合間を縫って海外の学会に参加するのはもちろん、海外の血液疾患に関する学会誌の最新論文もよく読んでいます。だから、僕のような素人がちょっと調べた海外の論文をぶつけても、とっくに読んでいて、「あれ、でもこの論文は維持療法の有無については・・・」とすぐに返ってきます。
だから、僕の治療に際しても、海外で治療成績の向上が次々に報告されているHyper-CVAD/MA療法を最初から選択してくれたものと思います。
ただこのHyper-CVAD/MA療法は非常に強い抗がん剤治療としても知られています。つまり副作用が激しく、そのコントロールのために基本的には入院治療が前提となりますし、副作用に耐えうる体力も求められます。他のレジメンのように通院治療はできません。でも、生存率は従来のレジメンより有意に高くなっています。国内のサイトでもこのように紹介されています。
▼リンパ芽球性リンパ腫:[がん情報サービス]

2004年にThomas医師らは、ALLに施行されていた強力な化学療法である「Hyper-CVAD/MTX+Ara-C療法(シクロホスファミドの分割投与、ドキソルビシンの持続投与、ビンクリスチン、デキサメサゾン/メソトレキセート、シタラビン大量)」に、6〜8回の脊髄腔内(せきずいくうない)抗がん剤投与を行い、さらに2年間の維持療法を行うことで、完全寛解率91%、3年間の無病生存率66%、全生存率70%という良好な治療成績が得られたことを報告しました。

今はこのHyper-CVAD/MA療法にリツキサンを加えることで、さらに高い治療成績が得られることが、同じチームから報告されています。僕が主に参考にした米MD Anderson Cancer Centerの下記の論文です。
▼治療方針に関して主治医と繰り返した議論の中身: Hyper-CVAD/MA+リツキサン療法と造血幹細胞移植|オーシャンブリッジ高山のブログ
このように、悪性リンパ腫には様々な種類があり、それぞれに最適な治療法は異なります。そして治療方法は日進月歩で改良、改善されていき、新薬もどんどん開発されています。そして通常、一連の治療には年単位の時間がかかります。
最適な治療を選択することももちろん大切ですが、常に海外も含めた最新の治療方法やそのエビデンスをウォッチし、それを柔軟かつ積極的に治療に取り入れてくれる病院、医師を選ぶことが大切だなあ、と改めて思います。
その点では、虎の門病院の血液内科の谷口修一先生、主治医のGY先生、担当医のMY先生には本当に感謝しています。多数の患者を抱えてお忙しい中、素人の僕がちょっと海外論文をかじった程度でぶつける議論にも、いつも快く、しかも長時間にわたってお付き合いしてくださいました。改めてありがとうございました。
最後に、以前外来診察の際にMY先生からお聞きしたお話を抜粋します。
▼寛解後の維持療法・強化療法について担当医と相談/5年生存率は6〜7割?|オーシャンブリッジ高山のブログ

この白血病や悪性リンパ腫の分野は、どんどん新しい薬が開発され、日本でも臨床試験を通っていきます。今後そうした新しい薬が出てきたら維持療法を切り替えることも考えられます。

また大切なのは、個々の患者さんによって、そして患者さんの状態によって、治療方法は変わってくるということです。

そして、同じ治療方法でも、病院による経験の違いで、治療成績に差が出てきます。例えば移植治療については、虎の門病院は東大病院とも連携し、他の病院に比べかなりの経験を蓄積しています。